修復工事が終わり、5月10日午後1時より通行可能となった常磐橋。見どころは、浮世絵や古写真などを参考に、本来の常磐橋の姿に再現されたところ。さらに、常磐橋と実業家「渋沢栄一」との関係も見逃せません。
常盤橋門跡・常磐橋
散策のポイント
- 近代的石造橋の先駆けとなった常磐橋のデザイン
- 歩車分離の路面
- 国指定史跡の常盤橋門跡
- 渋沢栄一の銅像
- 常磐橋と渋沢栄一との関係
5月10日午後1時より通行可能に
明治時代を象徴する石橋へ
東日本大震災で大きな被害を受け、長い間、修復工事を行っていた常磐橋が本来の姿を取り戻しました。八角形の大理石の親柱と、唐草意匠の手すり柵。そして路面には当時いち早く取り入れられた「歩車分離」(人は端、馬車と人力車は中央)が再現されています。これらは浮世絵、古写真、資料などを頼りに復元されたとのことです。
修復工事が完了した常磐橋
常磐橋 歩車分離の路面
マップ
歴史
常盤橋門
江戸城外堀の玄関口
寛永6年(1629)に置かれた、奥州街道に繋がる江戸五口の一つ。江戸城外郭の正門にあたり、交通の要衝として重要な役割を果たしていたところです。
明治4年の常盤橋門(出典:常盤橋門跡案内板)
常盤橋門は、江戸五口のひとつ奥州道の出口で、浅草口あるいは、追手口、あるいは大橋ともいわれ、江戸時代を通して江戸城の正門である大手門へ向かう外郭正門でありました。中世には江戸と浅草を結ぶ街道(奥州道)の要衝であったと考えられています。(後略)
引用:常盤橋門跡案内板
国指定史跡
門は明治6年(1873)に撤去されましたが、残った石垣の保存状態が良好であり、常磐橋と共に保存されていたことから、昭和3年(1928)に「国史跡常盤橋門跡」に指定。現在は昭和8年(1933)に開園した常盤橋公園となっています。
常磐橋
常盤橋門前の橋
天正18年(1590)に架けられたといわれる常磐橋。江戸時代は木橋でしたが、明治10年(1877)に小石川門の石垣を一部に使い、石橋に改架。大理石による八角形の親柱や、唐草の意匠が施された手すり柵が特徴。同時期に築造された他の石橋には見られない近代的石造橋の先駆けとなりました。
常磐橋 歌川広重「古今東京名所」(出典:工事のお知らせ)
関東大震災での被害
大正12年(1923)に発生した関東大震災で大きな被害を受けます。その後、長期間にわたり放置されていましたが、昭和8年(1933)に常盤橋公園が開園し、昭和9年(1934)に常磐橋の修復工事が行われました。
東日本大震災での被害
平成23年(2011)の東日本大震災により、再び大きな被害を受けます。アーチ輪石の変形や路面の陥没などにより崩落の危険が生じていました。
常磐橋アーチ輪石の変形(出典:工事のお知らせ)
常磐橋の修復工事
崩落の危険が生じていた常磐橋は、平成23年(2011)に修復工事を開始。常盤橋門跡のある常盤橋公園は修復工事の資材仮置場などに利用され、工事用フェンスに囲まれました。
修復工事中の常磐橋
現場には工事の進捗状況などが掲載(工事のお知らせ)
修復工事完了
令和3年4月20日号の広報千代田(東京都千代田区の広報紙)では、常磐橋の修復工事が完了し、5月上旬から通行できることと、橋の修復工事や歴史を4ページの特集で取り上げています。
東京駅からほど近く。再開発なども進む日本有数のビジネス街を通る日本橋川に架かる国指定史跡常盤橋門跡内「常磐橋(ときわばし)」が、修復工事を終え、5月上旬から通行できるようになります。(後略)
引用:広報千代田 令和3年4月20日号
常盤橋公園内の一角には「渋沢栄一」像
常磐橋と渋沢栄一
常盤橋公園内の一角には、日本の資本主義の父といわれる実業家「渋沢栄一」の銅像が見られます。渋沢栄一は、関東大震災で大きな被害を受けた都市の復興事業に尽力。常磐橋一帯は、渋沢栄一の遺志を継ぐ「渋沢青淵翁記念会(現・渋沢栄一記念財団)」からの多額の寄付により復興されました。銅像は日本で初めての銀行「第一国立銀行」のあった方向を向いています。
渋沢栄一の銅像(常盤橋公園内)
渋沢栄一とは
天保11年(1840)に埼玉県深谷市の農家に生まれる。慶応3年(1867)に欧州の先進諸国を視察し実情を学ぶ。明治維新となり帰国すると、日本初の株式会社「商法会所」を静岡に設立。その後、明治新政府に仕官し、国の近代化に貢献。明治6年(1873)に大蔵省を辞任し、同年創立された「第一国立銀行」の総監役(後に頭取)に就任。企業の創設、育成に力を入れ、生涯で約500もの企業に関わり、約600の社会公共事業に携わる。渋沢栄一は公益のために尽力し、様々な分野に功績を残した人物。
周辺には・・・
目の前の日本銀行本店
国の重要文化財に指定された日本銀行本店本館
常磐橋前の外堀通りを挟んで向かい側には「日本銀行本店」があります。その日本銀行本店の中で最も古い西洋式建築物が「本館」。江戸時代は金貨を製造する「金座」があったところです。
日本銀行本店「本館」
日本銀行本店本館に隣接する人気の「貨幣博物館」
日本銀行創立100周年(昭和57年(1982))を記念して、昭和60年(1985)に開館した「日本銀行金融研究所貨幣博物館」。本物の小判など展示数は約3,000点!
貨幣博物館
(江戸の金座跡-小判を製造していた金座と日本銀行の関係)
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この辺りは歴史上の見どころの多いエリアなので、一緒に合わせて楽しむことができます。常磐橋から日本橋(橋)までは徒歩で約10分の距離です。
日本橋
(日本橋-はじまりは徳川家康の時代に架けられた木造の橋)
ココを歩いてみて
魅力ある橋
度々、延伸となっていた常磐橋の修復工事が終わり、ついに通行が可能となりました。今回の修復工事は手作業で行われた部分が多く、困難を極めた工事であったとのことです。一つひとつ丁寧に復元された橋を渡っていると、文明開化期のモダンな橋の魅力が伝わってきます。
アクセス情報
◆常盤橋門跡・常磐橋
- 所在地
東京都千代田区大手町2丁目~中央区日本橋本石町2丁目 - 交通
東京メトロ半蔵門線「三越前」駅B1出入口から徒歩2分
JR「東京」駅日本橋口から徒歩7分 - 問い合わせ
千代田区環境まちづくり部道路公園課(TEL:03-3264-2111)
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