歌川広重の「名所江戸百景」の中で「八ツ見のはし」として描かれている一石橋。江戸の名所の一つといわれ、橋上に立てば八つの橋が見渡せたという。現在、その面影はないが、一石橋周辺は歴史上の見どころが多いところです。
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日本橋川に架かる一石橋
中央区民文化財に登録された「親柱」
一石橋は外堀通りと交差する日本橋川に架けられている橋。南詰西側の親柱は大正11年に架け替えられた時のもので、平成14年に中央区民文化財に登録されている。
一石橋の親柱(中央区民文化財)
見どころの多いエリア
一石橋周辺
一石橋の歴史
日本橋より一石橋を見る図 歌川国直(国立国会図書館所蔵)
一石橋のはじまり
江戸初期に架けられた橋
寛永年間(1624~1647)、又は、それ以前から存在したといわれ、江戸初期に描かれた江戸図「武州豊島郡江戸庄図」には既に木橋として記されている。
江戸っ子の洒落から名付けられたといわれる「一石橋」
(前略)
橋名の由来としては、北橋詰め近くの本両替町に幕府金座御用の後藤庄三郎、南橋詰近くの呉服町には、幕府御用呉服所の後藤縫殿助の屋敷があり、後藤をもじって五斗、五斗+五斗で一石と名付けたと「江戸砂子」に見え、日本橋地区と神田地区を結ぶ橋として重要でした。(後略)
引用:一石橋の親柱案内板(中央区教育委員会)
鉄骨コンクリート造のモダンなアーチ橋へ
これまで木造だった一石橋は、大正11年(1922)に鉄骨コンクリート造(花崗岩張り)のモダンなアーチ橋に改架され、親柱四基をすえた白亜の橋となる。その後、関東大震災にも落橋せず、交通上の重要な橋として使われていた。
昭和初期頃の一石橋(出典:一石橋の親柱案内板)
昭和・平成の改修工事
一石橋の上流側の半分は昭和48年(1973)にスチール製の桁橋に架け替えられ、平成11年(1999)には下流側の半分の架け替えが行われ、現在に至っている。
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浮世絵で辿る一石橋の歴史
名所江戸百景「八ツ見のはし」
橋上からの眺望は江戸の名所の一つ
橋上に立てば、自身も含めて八つの橋(一石橋、日本橋、江戸橋、常磐橋、呉服橋、鍛冶橋、銭瓶橋、道三橋)が見渡せたことから「八ツ見のはし」とも呼ばれた一石橋。手前に見える橋の欄干の一部が一石橋で、中央に道三堀に架かる銭瓶橋と道三橋、その奥には江戸城と富士山が描かれている。
名所江戸百景「八ツ見のはし」
歌川広重(国立国会図書館所蔵)
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現在は・・・
浮世絵の面影はない
浮世絵と同じ方角には、コンクリートの壁と建設中の大きな建物、そして、川の上空に建設された首都高速道路。
現在の一石橋の橋上から
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直ぐ隣には
一石橋迷子しらせ石標
南詰西側の親柱の横には、江戸時代からの「一石橋迷子しらせ石標」が置かれている。一石橋から日本橋にかけては往来の多い繁華街だったため、迷子も多かったという。
一石橋迷子知らせ石標
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東京駅前常盤橋プロジェクト
再開発は段階的に行われ、2027年度には日本一の超高層ビルが誕生予定
一石橋の直ぐ隣では大規模複合再開発が進行中。A棟・B棟の2つの高層ビルと、C棟・D棟を合わせた4棟のビルが段階的に建設されている。A棟は2021年度完成予定で、B棟は日本一の超高層ビルとして、2027年度の竣工を目指す。
一石橋の直ぐ隣で建設中のA棟
A棟は地上40階、地下5階、高さ212mの高層ビル(2021年4月末完成予定)
B棟は地上61階、地下5階、高さ390mの超高層ビル(2023年度着工し、2027年度完成予定)
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ココを歩いてみて!
合わせて楽しめるエリア
現在の一石橋には江戸の名所の一つといわれた面影がありません。しかし、一石橋周辺は歴史上の見どころが多く存在するエリアです。徒歩10分圏内には、常盤橋門跡(現在工事中)、金座跡(現・日本銀行本店)、貨幣博物館、越後屋(現・日本橋三越本店)、日本橋魚河岸跡、日本橋(橋)などがあり、合わせて楽しんでみては如何でしょうか。
アクセス情報
一石橋
- 所在地
東京都中央区八重洲1丁目/中央区日本橋本石町1丁目 - アクセス
東京メトロ半蔵門線「三越」駅B2出入口直ぐ
JR「東京」駅日本橋口から徒歩6分
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